2012年10月30日火曜日

10月29日(月) 37点〜交渉術


タクシー料金の交渉(による値引き)は、法律で禁じられているが、

今回は、そういう話ではない。

昨晩24時過ぎやったかな

駅の先頭で待っていたら、

見た目20代後半くらいの若者が歩いてきた

ドアを開けると、

「福知山まで行けますか?」

内心びっくり、「おぉー!すげえ仕事やー」なんて叫んでいるのだが、

表面上はクールに振る舞う。

「(もちろん)行けますけど」

「じゃあ、お願いします」

車に乗り込もうと上半身を屈めてきた。

若者らしいと言えばらしいが、

ボサボサの髪である(お前もやろ)

上着はアーミー系の古着、

見た目で人を判断してはいけないが、

「あなたお金持ってますか?」

なんて聞けるはずもないので、

ある程度見た目で判断することも必要になってくる。

折しも28日には、東京から栃木の鹿沼まで約4万6千円の運賃を70歳のおばあさんが無銭乗車したなんていうニュースもあったが、

http://www.nikkansports.com/m/general/news/f-gn-tp0-20121028-1039312_m.html

こういう事件は(状況にもよるが)、

運転手にも責任がある場合もある

要するに、この若者を乗せて、「ドン!」とドアを閉め、

あとは出たとこ勝負

なんて、稼ぐ運転手はそういう対応をするのかもしれない。

しかし俺は違った。

若者が完全に乗り込む前に、

「結構(料金)かかりますよ」

「どこか(コンビニとか)金おろせるとこ寄ってもらったら大丈夫です。1万くらいかかります?」

これこれ、このやり取り(概算料金の通知)を乗る前にこなさないといけない。

「いや…1万ではとても無理です」

「2万…?」

「3万…は超えないと思うけど」

実際に「たくなび」で調べてみたら約2万6千円(プラス高速料金)ほどであった。

こういうときに、

絶対にトラブルを避けたいのであれば、多めに言うのがセオリーである

しかし、(大きい金額にビックリして)逃げられるリスクも高い

よく稼ぐ運転手はギャンブラーが多いので、

「2万かぁ…そのくらいで行けるかなぁ…どうかなぁ」

なんてとぼけて、とりあえず乗せてしまう、なんていう戦略を取るかもしれない。

そういう言い方をすれば、

「2万で行けるとは言ってないで」

という逃げ方が出来る。

実際彼は「2万なら乗ろうかな…」という感じであった。

しかし結局「3万」という数字を聞いて、

「…ちょっと考えさせてください」

と車から離れてしまい、ほどなく駅に電車が着いて、

次の客が乗車してしまったため、

彼とは永遠の別れとなったわけである

自分としては、適切な対応をしたという自負もあるが、

やっぱり(遠方)行きたかったー

という思いもないわけではない。

もっと際どいケースならともかく、

このケースは行けたかもなぁ・・・

もうちょっと攻めても良かったかも、

と少し悔いの残るケースであった(結局他の車に乗ったかもしれへんしな)。

しかし、タクシーが面白いのは、

もしあそこで、ちょっとした言い回しの違いで彼が乗車していたら

どういうことになったとしても、

俺は彼にとって一生忘れることの出来ない運転手になっていたかもしれない

しかし、実際は彼とは上のようなちょっとした会話を交わしただけで、

恐らく、いや間違いなく、

お互いの人生で2度とすれ違うことはない

そんな紙一重の淵を歩いている

そういう面白い、そして時には恐ろしい仕事なのである。


10月29日(月) 日照4.0 雨0 気温18.2-6.9
営収 37,370(13,620) 20(10)回 13.00(6.00)時間
Max 3,270-12,150

月曜というのに、

昼間も夜もよく動いた

やっと(流れが)来たか

と思ったのも束の間…

今日(30日)はまたありえへんくらいひどいわ。

10月30日(火) 日照4.8 雨0 気温18.2-5.0
営収 14,230(3,320) 10(3)回 12.00(6.75)時間
MAX 1,430-2,790


いやぁ、記憶に残るくらい

ひどい一日やった・・・

昼間は12-17時まで、きれに5時間の日干し

夜も流れ悪く、

最後は駅先頭あぶれ(自分のところで終電客が途切れること)

良い日があれば、次に崩れるパターンが続いていたが、

ここまでひどいと、さすがに嫌になるわ

2012年10月28日日曜日

10月27日(土)26点~アップエンダウン


ザクロの実

ザクロの実

青い空に輝く秋の太陽

手に取って

高く高く投げてみたい

まっすぐに

そして大きな声で叫ぶんだ

「おーい!にげろー!冬が来るぞー!」

(ある小学生・・・みたいなタクシー運転手が書いた詩)

はぁー

何も言えねぇ・・・(北島か)

休み一日挟んだ連続5連勤、11日間で10乗務のハードなスケジュールを終了

しかし今週は良い天気が続いたなぁ

今回の5連勤の結果詳細

10月23日(火) 日照0.3 雨16.0 気温21.3-8.9
営収 47,020(16,270) 23(12)回 13.25(7.25)時間
MAX 2,390-11,430


午前中は雨

夜にホテルでイベントの前夜祭があって、よく動いた

久々にちょっとした有名人を何名か乗せた。

10月24日(水) 日照8.6 雨0 気温17.5-5.2
営収 27,380(17,060) 13(9)回 11.50(8.00)時間
MAX 4,230-4,950


出だし好調で、

15時過ぎに12点近く持ってイベント会場へ

しかし、4時間待ち・・・懲りたわ

夜も動かず、ひどかった。

10月25日(木) 日照7.6 雨0 気温20.2-6.2
営収 32,700(14,020) 13(8)回 11.50(6.25)時間
MAX 2,710-9,270


そこそこの動きやったかな

しかし夜に期待したお医者さんのイベントはなし・・・

夜は同僚のマナーに文句を言って少し口論した。

(運転手としては)若いけど、言うことは言わないとね。

10月26日(金)  日照9.7 雨0 気温21.5-5.8
営収 54,480(19,900) 16(7)回 12.75(7.00)時間
MAX 13,750-12,950


うまくいった

午前中にジョギングして、昼頃からの出勤

金曜というのに、全く動かずに夕方まで6点

もう中断しようかというときに、大きな仕事(江坂)があたって、

夜もロング2回

景気良かったというより、ついてたな。

10月27日(土)A 日照9.0 雨0 気温23.4-6.8
営収 26,160(10,260) 13(3)回 11,75(5.25)時間
MAX 7,030-2,710


この頃は、良い日が一日あっても

次の日に崩れるパターンから抜け出せない

13時半頃から入って、

休憩なしでがんばったが、

いつも休憩を取る時間帯(18-20時)は仕事なし・・・

その後も冴えず、

最後は少し雨が降ってきた。

5連勤をまとめると、

23日(火) 47,020 23回
24日(水) 27,380 13回
25日(木) 32,700 13回
26日(金) 54,480 16回
27日(土) 26,160 13回

合計 187,740(平均37,548) 78回(平均15.6回)

よくがんばったけど、

売上は申し分ないけど

回数少ないなぁ・・・(ついてただけいうことか)



2012年10月25日木曜日

10月24日(水)27点~プロとは何か?

「プロじゃなかった…」リストラで運転手になったミドルの重い一言


河合薫さんという、

ニュースステーションなんかでお天気お姉さんなんかをやっていた女性の書いた、


タイトルに引かれて読んでみると、

この女性は、よっぽどタクシー運転手という職業をバカにしている

というよりも、そもそも職業とも思っていない

ということが感じられて、非常に不快だった。

コラムの内容を簡単に説明すると、

ある日筆者の河合さんが、東京でタクシーに乗られて、

その運転手が身の上話を始めた

見た目40過ぎの新人運転手で、運転手としては若い部類に入るだろう。

その運転手は元製造業の出身で、

中国語が話せるため、現地の工場に出向いて生産管理をされていた。

しかし、そのうち現地の中国人が日本語を話せるようになってしまったため、

お役御免となり、

結局リストラされてタクシー運転手になっている

最後に彼の言った言葉が印象的である。

「まぁ、私はプロじゃなかったということです。営業としても、生産管理としてもプロじゃなかった。そういうことです」 

名言やなぁ・・・と思うが、筆者はこの言葉の本当の意味を分かっていない。

筆者はこの後、彼女が最近インタビューした男性とこの運転手を重ねている。

その男性は同じように、東南アジアの現地法人に出向き生産管理をされていたが、

グローバル化の波の中でリストラされてしまった。

日本に帰って、飛ばされた出向先で2年間何も仕事を与えられずに完全に干され、

その後知り合いの紹介で転職している。

そして驚いたことに、

彼女はこの窓際サラリーマン(恐らくこの男性は今後も行く先々で邪魔者扱いされるだろう)の転職を成功と捕らえ、

新人ドライバーの人生を失敗と断じている

その後、

「プロとは何か」

ということを、つらつらと書いているが、

彼女なりに、プロとは、

「その人の代わりはいない」

という定義らしい。

うーん・・・そうすると、

代打を出された時点で、その野球選手はプロではなくなるのか?

自分もプロの運転手として誇りを持って仕事をしているが、

はっきり言って、俺の代わりなどいくらでもいる

別に俺でなくても、その仕事は出来るわけである。

それならプロとは何か?

どうやろ、俺なりに定義するならば、

自分だけで仕事を出来る人間

例えチームで働いていたとしても、自分の仕事(領域、ドメイン)を持っている奴

そして、その仕事で相手をうならせる技術と、人間性を兼ね備えていることではないだろうか

まさにタクシー運転手がよく「プロ」と表現される所以である

我々は一人で勝負している

非常にプロの仕事を表現しやすい環境にある。

上の運転手は、新人さんながら、そのことに気付いていたのではないだろうか。

もう一度、その発言を繰り返そう。

 「まぁ、私はプロじゃなかったということです。営業としても、生産管理としてもプロじゃなかった。そういうことです」 

この後に続く言葉に、筆者は全く気付いていない。

「わたしは、この仕事(タクシードライバー)で今度こそプロになるつもりです。奥の深い、本当にやりがいのある仕事です」

2012年10月22日月曜日

10月21日(日)28点~都道府県別年収ランキング(平成22年度版)-追記しました


この写真は何かと言うと、

久々にブレイクした20日の乗務の最後の乗車を終えた後に、

眠くて眠くて仕方なくなって、

伊丹駅の近くで、仮眠する場所を探していて、

このバス停に車を停めて寝ていた(大胆やな)

起きて記念撮影

タクシー運転手のみなさん

眠くなったら、なりふり構わず車停めて寝ましょう!(なんか美談に仕上げてんな・・・)

以前のブログで、

都道府県別年収ランキング

なる投稿をして、

ここのアクセスが結構多い

ちなみにこの21年度(2009年4月~2010年3月)のランキングは、

 1.愛知県 403万円
2.東京都 365万円
3.兵庫県 331万円
4.神奈川県 308万円
5.奈良県 300万円
6.千葉県 298万円
7.岐阜県 296万円(295.9)
8.大阪府 296万円(295.7)
9.埼玉県 288万円
10.静岡県 279万円
次点 香川県 273万円


この投稿は約2年前のものだが、

今ごろになって

 「2011年も教えてください」

なんていうコメントが入った。

わかりました、やりましょう

というか、22年度(2010年4月~2011年3月)のものだが、

1.東京都 348万円
2.神奈川県 341万円
3.埼玉県 338万円
4.広島県 320万円
5.岐阜県 310万円
6.三重県 285万円
7.岡山県 278万円
8.千葉県 273万円
9.栃木県 270万円(269.88)
10.愛知県 270万円(269.81)
次点 山梨県 267万円
(数字は万単位に四捨五入)
参考:Taxicabs White Paper Series 11

いやぁ・・・驚きましたね

神奈川や埼玉などの関東圏が延びている一方

愛知の落ち込みはハンパないね・・・

同じ東海圏の岐阜は強い

ちなみに前回健闘した兵庫県も落ち込みは激しく、

大阪(15位)とほぼ並んで、16位 262万円

実感はないけどね。

この後の23年度(2011年3月~2012年4月)の伸びがすごかった。

後からこそこそと・・・行きましょか

1.東京都 379万円(前年比+8.6%)
2.愛知県 329万円(同+21.9%)
3.神奈川県 320万円(同-6.2%)
4.兵庫県 315万円(同+20.2%)
5.大阪府 297万円(同+13.4%)
6.京都府 296万円(296.36 同+15.2%)
7.宮城県 296万円(296.18 同+46.5%)
8.茨城県 290万円(290.40 同+25.5%)
9.埼玉県 290万円(289.70 同-14.2%)
10. 静岡県 288万円(同+20%)

いやぁ・・・驚きましたね。

ポイントとなる東京は約9%の伸び、

そして全国平均は291万円で約5%の伸び

愛知県は前年(22年度)の落ち込みは短期的なもので、

見事に2位に返り咲き、タクシー先進国を実証しました(岐阜は悪かったな・・・)。

兵庫県の伸び(プラス20%)はまさに実感と一致

しかしこの年度で最も印象的なのは、

宮城県やろね

復興需要、仙台景気とはよく話に聞いていたが、

これほど数字にはっきり出るとは驚きである。

47%の増加とか、ありえないっしょ・・・

まあこの世界、一寸先は闇かもしれないけど、

また明るい光が射すのも早い言うことやね

追記:

こちらのランキングの数字を見ると、

やっぱりタクドラの収入って少ないなぁ・・・

という印象を受けるかもしれない。

上のデータソースにおける、

全国の平均年収は21年度が281万円、22年度が278万円である

全国平均の数字がどちらの年度においてもベスト10に入ってくる

要するにタクシー運転手というのは、

都市部に集中している

22年度の全国のタクシー車両数が26万5,431台

そのうち東京都に57,119台、約22%を占めるわけで、

全国平均は、東京の数字に大きく左右される

そして、東京のタクドラのみなさん

東京の平均年収が348万円という数字をどう見ますか?

さすがにそんなに少なくないですよね

タクシードライバーの平均年齢はこの年(22年度)で56.6歳

ローンを払い終えて、

年金をもらいながら、小遣い稼ぎをしている

定年過ぎの運転手が今や半数を超える勢いだろう

昼間は乗り場で座談会をして、

夜は家で巨人戦を観て、

「あぁービール飲んじゃったから、今日はもうやめとくかー!(そんなわけあるか)」

なんていう自由な職業である。

まあ言いたいのは、平均年収にはそんな悠々と仕事をしているおじいさんの数字がめちゃめちゃ入っているということである。

30代、40代の若い運転手が真面目にやれば、

少なくとも平均の2割増しは取れると言っても言いすぎではないだろう

そして、これからそんな年配のリゾートドライバーは減っていきます。

今後平均年収は間違いなく増えていきます

わたしを信じて、若い人たちに是非この世界に入ってきていただきたい

もし、わたしがうそをついていたのなら

ごめんなさい(それだけか)


10月19日(金) 日照8.0 雨0 気温19.3-8.3
営収 33,120(12,940) 18(9)回 12.75(7.00)時間
MAX 2,630-5.350


金曜にしては、さえなかったかなぁ・・・

10月20日(土) 日照10.4 雨0 気温6.0
営収 54,680(21,040) 19(8)回 12.75(5.50)時間
MAX 11,030-15,270


締め日でブレイクは大きいなぁ。

給料日に近いから、キャッシュフロー的にいい感じ

10月21日(日)A 日照10.0 雨0 気温23.5-7.8
営収 28,580(6,520) 7(3)回 10.75(4.50)時間
MAX 4,390-15,510

とにかく、この週末は天気が良かった。

気持ちの良い秋晴れ

昼間はさっぱりやったけど、夜に当たり

それにしても、11時間で乗車7回かぁ・・・

2012年10月19日金曜日

10月17日(水)41点 18日(木)25点~「ここどこ?」

とにかく最近の傾向として、

良い日が続かない

たまにパッと揚がった日があって、

良くなってきたか

と思うと、

必ず次の乗務で奈落の底に落とされる

そんなことが続いている。

10月17日(水) 日照0.6 雨43.0 気温20.4-15.7
営収 41,380(20,200) 23(15)回 13.25(7.25)時間
MAX 3,590-10,230


昨日は午後からかなりまとまった雨が降って、

昼も夜もよく動いた

特に前半戦は面白いように仕事が出来たのだが・・・

10月18日(木) 日照0 雨0 気温17.4-15.0
営収 25,580(6,670) 10(4)回 12.50(7.00)時間
MAX 2,310-11,510


今日の前半戦はひどかった・・・

14-18時はなんと4時間近い空白が出来てしまっ

夜もさえずに終わりかけた24時過ぎ

見た目60前後の男性が乗車、

「S山まで行って」

おー、そこそこ遠方ほどや。

「わかりました。国道で行ったらいいですね」

「うん・・・もしもし」

返事もままならず、携帯で誰かと話し始めた。

タクシーに乗っていると、

人相である程度人の内面まで見えるようになる

この客は、まあ、そんな感じやった(どんなんやねん!)。

「まだ店にいるのか!何してんのや!もうそいつら帰らせて、駅まで来い。いいな!」

電話で誰かに高圧的に怒鳴りつけている。

電話口の向こうからは女性の声が聞こえる。

駅に女性が迎えに来るのか・・・

そのうち寝てしまったので、

目的地が近づいて声をかける。

「お客さん!お客さん!駅近くなってきましたよ」

「あ?あぁ、ロータリー入って、ちょっと待ってて」

えぇー!急いで帰ったらまだ終電間に合う時間なのにー

メーターは8千円ほど

この金額では足切り程度(2.3万)で終わってしまう。

男性はまた電話をかけ始めた。

きっとさっきの女性やろう。

「おい、どこや?駅まで来てへんのか?・・・なんや」

「どうしましょう?」

「運転手さん。悪いけど駅出て、もう少し走ってくれる?」

「わかりました」

おっ、もう少し続くのか。

指示通り走っていくと、

「あっ、そこの駐車場入って」

どこかの役場みたいなところである。

後から、ちょっと派手な女性が歩いてきた。

「あちらの女性ですか?」

男性は後を振り返って、

「あぁ、そうそう。ドア開けて」

アラフォーっぽい女性が乗り込んできた。

随分酔ってるみたいで、

派手な化粧で、香水の匂いもきついが、

そこそこのべっぴんさんやった。

「運転手さん、まだもうちょっと行ってくれる?」

「わかりました」

おーまだ続くか。

悪くないやん。

「よっちゃん、さむーい!」

女性は乗るなり男性に抱きついて、

そのうち後部座席ではただならぬ物音が・・・

しかしどこまで行くねん

メーターは1万1千を超えた。

「あっ、運転手さん。そこ入って」

「ここ?ここですか?」

 

久々に来たよ、ラブホテル

女性が先に降りた。

「ねぇ、ここどこ?」

男性が車内で支払いをする。

「酔っ払いが・・・アホやな。明日んなったらきっと何も覚えてないで。運転手さん、ありがとな!」

2012年10月16日火曜日

10月15日(月)23点~景気ウォッチャー調査


10月15日(月) 日照9.7 雨0 気温23.5-8.0
営収 23,390(17,870) 16(12)回 12.00(7.00)時間
MAX 3,030-1,910

苦しみながらも、

何とか何とかもがいて、つないでいるのだが

中々追い風が吹かない

今日も昼間はいい感じやったのに、

夜は最悪・・・

良くなったと思えば、落とされての繰り返し。

内閣府の行っている

景気ウォッチャー調査

なるものがあるのだが、

先日久々に日経を読んでいたら、たまたま調査のグラフが出ていて、

タクシーの景気の波と非常に良く似た動きをしていた

というのも、

なんと言ってもウォッチャーの調査の重要な対象にタクシー運転手が含まれているのである。

ちょっと詳しく分析してみようと思ったが、

時間かかりそうなので・・・(なんやねん)

時間かけてやります(ほんまかい)

2012年10月14日日曜日

10月13日(土)36点~プリウス乗車


先週の土曜日がひどかった(10点)ので、

気を引き締めて臨んだ土曜日 

午前中は娘のオープン参観日で、 小学校をウロウロしていた。

仕事の入りは13時過ぎ(どこを引き締めたんや?) 

公休出勤なので、他の乗務員の車を借りなければならない。

幸い車はたくさん空いていたので、

どーれーにしよーかな・・・

なんて車庫を物色して、

決めた

事務所に入って、

「すんませーん。(プリウス)アルファ乗りますわ」

ピカピカの新型車なので、

敬遠して誰も乗ろうとしないが、

一応後輩(かなり年上だが)の持ち車である

稼働率を上げるためにも、

俺ぐらいしか乗るやつおらへんやろ

と乗務員証を受け取りに行くと、

「(いい車やから)当てんといてや・・・」

誰にもの言っとんねん。

まあしかし、乗ってみると、

静かやし、乗り心地は抜群

利用者の評判も良く、

昼間は某大企業のゴルフコンペが当たって、

営収も好調

夜になると、

いい車にイケメンが乗っているので、

若い女性が目を輝かせて乗ってくる

気分良く迎えた最後の客

60前後かなぁ・・・

会社では恐らく良い位置にいるんやろなぁ(認めたくないけど)

みたいな男性が、乗るなり

「おお、いい車乗ってるやないか」

「・・・ありがとうございます」

「この車は、あの、なんや交渉出来るんやろな」

「交渉??なんのことですか?」

「何のことって、お前、交渉で安く出来るんか?言うてんねん」

感じわる!なんやねん、この客。

初対面で『お前』かい(よくあるけどな)

まあしかし、そんなこと言うんやからそこそこ遠方なんやろ。

「(交渉なんて)出来ませんけど」

「・・・まあいいから行って。早めにメーター切ってな」

「・・・」

感じわる!めっちゃ悪いわ。

行き先はやっぱりそこそこのところ(8千円ほど)やったけど、

降りてもらってもいいんやけど、

『行って』言われたら行かなしゃーない。

こういうの断ったら揉め事になるし、「払わへん」言うてるわけちゃうし。

なんて思いつつ、

走りだしたら、そのうち寝てしまった

こういう場合、会話していたらどんどん気分悪くなるのが分かってるので、

とりあえず安心した。

目的地に近づいて・・・なるべく近くまで行ってから声をかけた。

「お客さん!S駅近くなってきましたよ」

「・・・は?はぁ、あぁあぁ、もうちょっと行って」

「まっすぐ行ったらよろしいですか?」

「うん・・・なんやもうメーター8千円超えてるんか。すぐ止めて」

ここで、この人は「メーターを止めろ」と言っているのは、分かっていたが、

「はい?停めますか?」

ととぼけて、路肩に車を寄せて停めた。

「車停めてどうすんねん。メーター止めて、もう少し走って」

「・・・あの、お客さん。どこで車を停めるかはお客さんの自由ですけど、『メーター止めて走れ』なんてのは違法行為ですよ」

「お前真面目やなぁ。よう仕事してる。いいからもうちょっと行けや」

「メーター周りますけど、よろしいですか?」

「よろしいわけないやろ。もうちょっと先や、行け。みんなそう言ったら行くで。8千円も払うんやで」

あー感じわる。

負けたくねぇ。

「みんなやってるって・・・そんなん知りませんけど。違法行為ですから。みんな大麻吸うてるんやから、お前も吸え言うてるのと同じですよ」

「お前ほんまに真面目やな。感じ悪いな。まあいいわ、いくら?」

感じ悪いのはお前や!!!

「ありがとうございます。8,230円です」

「8千円にしといて」

「無理です」

毅然と答えると、男性はしぶしぶ230円まで小銭を出して、

「領収書書いて」

「わかりました」

領収書を渡すと、

「じゃあ、あそこの信号まで行って」

「はい?」

「あそこの信号まで行って言うてるねん。すぐそこやんか」

「あそこの信号」は約200メートル先

ここで問題です。

あなたならどうしますか?

①言われた通り、200メートル先の信号までメーターを切って走る

この場合、

メリット:そうすればこの客は気が済むだろうから、大人しく降りてくれて少しでも早くこの客と別れ、次の仕事に向かうことが出来る

デメリット:例え200メートルでも、この客の言いなりになったことで、言いようのない敗北感と屈辱感を味わわなくてはならない。

②「それじゃあ、またメーター回りますけど、よろしいですね?」と言ってメーターを再起動させる

この場合、

メリット:徹底的に戦うことで、プライドを保つことが出来る

デメリット:「はい、わかりました」とは言うわけがないので、結局時間を食って、次の仕事にひびく

③「いえ、もう精算は済ませたので、ここで降りてもらえますか?」

メリット、デメリットはほぼ上に同じ。

10月11日(木)A 日照4.1 雨1.5 気温23.6-14.8
営収 39,060(12,180) 19(9)回 12.50(7.00)時間
MAX 2,470-6,230


うーん、ここでは何とか息を吹き返したと思ったんだが、

最終に駅からGタウン、無線でGタウンからS山口まで、

うまくつながって、その二つで1万、

ラッキーやった。

10月12日(金) 日照7.0 雨0 気温20.4-8.1
営収 28,080(6,860) 17(5)回 12.75(7.25)時間
MAX 2,390-7,270




また大きく崩れた金曜・・・

最終にミドルで踏ん張ったが、苦しい流れから逃れられない。

10月13日(土) 日照7.2 雨0 気温22.4-6.4
営収 36,220(19,300) 13(6)回 11.00(5.75)時間
MAX 14,310-8,230


土曜にそこそこ作れて、とりあえず週末に息はつけた。

Tゴルフクラブから某企業の幹部さん乗車、

会社内部のことをいろいろ話してくれて興味深かったが、

降り際に、

「あぁ・・・酔っ払って話しすぎたな・・・運転手さん、今日話したことはほかで話さないでね」

「もちろんです」


2012年10月10日水曜日

10月9日(火)20点~金木犀の咲く季節は・・・


金木犀の香る、

気持ちの良い季節だが、

如何せん営収の方は惨憺たる状況が続いている

10月9日(火) 日照8.9 雨0 気温23.9-11.4
営収 20,050(8,760) 15(8)回 12.50(7.25)時間
MAX 2,230-2,790


今日の乗務の後に日報を提出に事務所に入ると、

暗い空気が流れている・・・

「こんなこと(ひどい状況が続くことって、今までにありました?」

俺も10年戦士ともなると、

ベテランに片足を突っ込んだような域に入っているので、こんな質問を受ける。

「こんなこと・・・ありましたよ。いや、よくありましたけど、最近にしては珍しいですね」

データを見ると、今月のここまで、

 
1 Mon 33580
2 Tues 40770
3 Wed 17770
5 Fri 30710
6 Sat 10060
8 Mon(H) 12650
9 Tues 20050


165590


23655.71

こんな感じで、ちょっと今までにない数字(1万、2万)が続いている。

2.3万(当社足切り金額)以下を赤、3.5万以上を緑で色付けしてみた。

去年からずっとかつての厳しい状況を忘れていたのだが、

さらにデータを分析して、

面白い(?)ことに気がついた。

 



1~3月

4~6月

7~9月
1 3 Tues. 30450 2 Mon. 32940 1 Sun. 21340
2 4 Wed. 24900 3 Tues. 44860 2 Mon 28450
3 5 Thur. 23330 5 Thur. 37560 4 Wed. 27300
4 6 Fri. 31510 6 Fri. 39100 5 Thur. 28360
5 7 Sat. 31270 8 Sun. 29100 6 Fri. 54940
6 10 Tues. 47240 9 Mon. 38080 7 Sat. 13860
7 11 Wed. 18390 11 Wed. 61660 10 Tues. 28540
8 12 Thur. 26480 12 Thur. 30290 11 Wed. 25470
9 13 Fri. 29600 13 Fri. 34460 13 Fri. 32920
10 19 Thur. 29750 14 Sat. 27720 14 Sat. 29890
11 20 Fri. 33540 17 Tues. 29480 18 Wed. 25750
12 21 Sat. 33730 18 Wed. 34860 19 Thur. 40300
13 22 Sun. 26390 20 Fri. 33300 20 Fri. 56160
14 26 Thur. 32900 21 Sat. 30530 23 Mon 22530
15 27 Fri. 57230 23 Mon. 33660 25 Wed. 37600
16 28 Sat. 39780 25 Wed. 29330 26 Thur. 41460
17 31 Tues. 18990 26 Thur. 31350 27 Fri. 27830
18 1 Wed. 38350 27 Fri. 42490 28 Sat. 22260
19 2 Thur. 39820 30 Mon. 23430 31 Tues. 39960
20 3 Fri. 50450 6 Sun. 22460 1 Wed. 46630
21 4 Sat. 32420 7 Mon 19210 2 Thur. 26390
22 7 Tues. 31640 9 Wed. 27110 3 Fri. 33900
23 9 Thur. 19770 10 Thur. 36720 6 Mon. 32450
24 10 Fri. 44680 11 Fri. 30010 7 Tues. 28400
25 15 Wed. 32920 12 Sat. 30500 8 Wed. 27890
26 16 Thur. 30300 13 Sun. 15140 10 Fri. 24370
27 17 Fri. 36100 15 Tues. 28180 13 Mon. 23520
28 18 Sat. 38580 16 Wed. 35530 14 Tues. 27790
29 20 Mon. 23550 18 Fri. 36660 17 Fri. 21050
30 21 Tues. 35520 19 Sat. 38430 21 Tues. 25070
31 22 Wed. 45900 21 Mon 32830 22 Wed. 29510
32 24 Fri. 47700 22 Tues. 29340 23 Thur. 26830
33 25 Sat. 27320 24 Thur. 16940 26 Sun. 17800
34 27 Mon. 28940 29 Tues. 45990 29 Wed. 35050
35 28 Tues. 41560 31 Thur. 33600 30 Thur. 40570
36 29 Wed. 22390 1 Fri. 27140 31 Fri. 43570
37 2 Fri. 61640 4 Mon 21650 1 Sat. 22890
38 3 Sat. 33980 6 Wed. 49590 3 Mon. 49270
39 5 Mon. 25770 7 Thur. 29000 4 Tues. 29590
40 6 Tues. 25590 8 Fri. 52860 5 Wed. 43130
41 8 Thur. 41170 9 Sat. 31570 7 Fri. 33980
42 9 Fri. 34680 12 Tues. 24690 10 Mon. 23410
43 10 Sat. 24260 13 Wed. 28180 11 Tues. 22870
44 12 Mon. 40510 15 Fri. 34050 13 Thur. 33750
45 13 Tues. 24940 16 Sat. 30900 14 Fri. 35910
46 14 Wed. 30500 18 Mon 26370 19 Wed. 29780
47 18 Sun. 19400 19 Tues. 19880 20 Thur. 28050
48 19 Mon. 33140 20 Wed. 36210 21 Fri. 29990
49 20 Tues. 29450 21 Thur. 32060 25 Tues. 31530
50 21 Wed. 43140 22 Fri. 36070 26 Wed. 20870
51 23 Fri. 51390 25 Mon 28440 28 Fri. 31200
52 24 Sat. 27230 27 Wed. 24190 29 Sat. 34860
53 26 Mon. 41810 28 Thur. 32090

1616790
54 27 Tues. 25840 29 Fri. 34160

31092.12
55 29 Thur. 50520

1741950


56 30 Fri. 45270

32258.33





1913620








34171.79






3ヶ月ごとにまとめてみたら、

全然気がついていなかったが、

少しづつ平均が落ちている・・・

要するに、事務所でも後輩運転手たち(かなり年上やけど)に言ったのだが、

「ここんとこ、ちょっと良過ぎたんでしょうね。いい時期も、悪い時期もある、そうじゃなきゃタクシーなんて面白くないでしょう」

かっこいい・・・決まった。

クールな横顔を見せながら、退室しようとドアノブに手をかけると、

「いや、そりゃあずっといい方が面白いですよ。悪い時期なんて、一体何が面白いんですか?」

2012年10月9日火曜日

「ビッグチッパー完結編」~10月8日(月)12点


「すみません。もう今日は(タクシーは)いいです。来 週からも、もう要りません」

それだけ言って、電話は切られた。

そして、イチローの声を聞いたのも、そ れが最後だった。

なにか、やばいことをさせられている

とは思っていてものの、

なにもわからないままに、関係が途切れてしまうと落ち着かないものである。

先日受け取った3千万円が入ったボストンバッグは、自宅の押し入れに手付かずのまま眠っていた。

そして、また数ヶ月が過ぎた。

そろそろ金の使い道を考えていた頃だった

タクシーに乗っていたら、

マイホームなんて夢だと思っていたけど、

この金(3千万)があれば…

なんて、思いかけていた。

その日、夜の駅で並んでいると無線で呼ばれた。

「205号指名です。H駅に回送してください。お名前、ヒロタさま。女性です」

指名…ヒロタ?女性?

聞き覚えのない名前だが、

なぜ自分を指名するのだろう。

少し不安な気持ちを抱えて、

H駅に向かうと、

待っていたのは若い女性だった

春先でまだ夜は肌寒かったが、些か露出の多い黒いブラウスを着て、

ミニスカートで長い足をあらわにしていた。

化粧も濃く、こんな田舎の駅には似つかわしくない…

ビックリするような美人だが、

しかし、近寄りがたいというか、娼婦のような出で立ちだった。

「お待たせしました…ヒロタさまですね」

ドアを開けると、女性は迷いなく乗り込んできて言った。

「はい、こんばんは。ヤマシロさん、あなたの家まで行ってくれる?」

タバコのにおいがした。

わたしは暫し状況が理解できなかった。

「わたしの…家ですか?」

「そう、あなたの家」

「わたしの家に行って、どうするんですか?」

「どうするって?・・・変なこと考えてるでしょ?」

「いえ…あの、そういうお客さんてはじめてなもので…」

女性は運転席に身を乗り出してきた。

露出した肌が、わたしの肩に押しつけられた。

「『そういう客』って失礼ね。でも別にしても構わないよ」

「…」

「金がどこにあるか教えてくれたらね」

「…金?」

女性はさらに身体を近づけてきた。

「あなたが何をしたか・・・あなたが空港から運んだ荷物はかなりやばいもの、ばれたら大変なことになるよ」

「な、なんのことだ?」

「知らないとは言わせないわ。こっちは証拠も全て揃えられるようになってる。しかも、あなたは主犯」

「主犯!?」

「そう、全てあなたが計画して、『こと』を行ったようになってるわ」

「そんな・・・」

「とにかく金を返しなさいよ。そうすれば、全てはなかったことに出来る」

額から濃厚な汗が流れてきた。

わたしは自分の家の前に車をつけた。

女を待たせると、

部屋の押入れから、3千万円の入ったボストンバッグを、震える手で引きずり出した

車で待っていた女にボストンバッグを渡すと、

すぐに中身を確認していた。

「やっぱり、あなた真面目よね。多分1銭も使ってないでしょ。フフフ・・・だからあなたを選んだんだけどね。ここまで予定通りことが運ぶと怖いわね」

「俺を・・・選んだ?」

「そう、最初から全部計画されてたことなのよ。あなたは『選ばれた』の」

なんとも言えない感情が込み上げてきた。

「それならイチローは・・・?」

「あれも、わたしが雇った男よ。今はどこにいるかも知らないわ。駅まで戻ってくれる?」

「それならグランダーソンは?」と聞こうとしたが、これ以上寒い空気には耐えられそうもないと思って堪えた。

ルームミラーで改めて女の顔を見ると、

どこかで見たことがある

「もしかして、あのとき・・・」

「そう、おばちゃんと一緒に乗ったでしょ。このバッグを見つけてあげた」

「・・・そんな」

まさか、あのときに乗った、あどけない、かわいい娘が主犯だったとは・・・

駅まで戻ると、

メーター料金は2,510円だった。

「どうもありがとう。何も残らないんじゃかわいそうだから」

女はバッグの中から、1万円札を一枚出して置くと。

完璧な仕事を終えて、颯爽と降りていった。

開いたドアから、桜の花びらが舞い込んできた。



10月8日(月) 日照8.6 雨0 気温23.3-9.2
営収 12,650(6,900) 8(4)回 10.25(5.50)時間
MAX 2,790-1,910


祭日(体育の日)の駅番で、

悪いとは思っていたが、

結果は期待を裏切らなかった。

しかし今日は昼過ぎに、子どものサッカーの試合を観戦して、

息子の公式戦初ゴールを見て、

途中で抜けて、

14時からの乗務

夕方には娘のチームの優勝の報告を受けて、

まあ正直売上なんて、どうでもいいくらいに嬉しかった。



2012年10月7日日曜日

「ビッグチッパー④~運び屋」~10月6日(土)10点


「来てくれるのかな?来週の火曜日にお 願いしたいんだが」

「わかった・・・いや、わかりました」

約束は火曜日の朝10時に、

行灯を外して一般車用のロータリーで待つ。

空港にはタクシー乗り場があって、

多いときは100台超の車が並んでいる。

指名乗車は問題ないものの、

なるべく並んでいるタクシーに気づかれないように、

一般車に紛れて、ひっそりと待っていた。

そして10時ぴったりに男は来た。

「やぁ、その節はどうも」

「こちらこそ…どうも」

「まあとにかく出してくれるかな。ちょっと急ぐんだ」

そう言いながらも男は急いでいるようには見えず、

明らかに周囲の目を気にしていた。

「何とお呼びしたらいいですかね?」

わたしは指示通り車を走らせ、空港を出た。

「呼び名か…欧米じゃあるまいし。まあイチローとでも呼んでくれ」

それなら「わたしはジーターと呼んでください」という、いつもの軽口が出かけたが、何とか抑えた。

「ヤマシロです。よろしくお願いします」

こちらは本名を車に掲げているわけだし、今さら自己紹介するまでもないのだが、とりあえず言っておいた。

そして、その後は会話が途切れた。

これらから訊きたいことはいくらでもあったが、

何かを話してくれそうな隙は全くなかった

そういう空気は運転手にしか分からない感覚である。

車内の録音レコーダーの存在も警戒しているのだろう。

「その先に見えるコンビニの駐車場に入れてくれるかな」

「わかりました」

メーター料金は1,160円

男…いやイチローは約束通り1万円札を置いて、なに食わぬ顔をして降りていった。

なんとなくやばそうな空気を感じて、すぐに車を出そうとしたのだが、

後部座席に忘れられているカバンに気がついた

イチローを見ると、タクシーを降りて、コンビニの中に入っていった。

誰かと話をしている。

そしてそのイチローと会話をしていた若い、一見学生にも 見えるやせた男が、同じような年代の女を連れて、

コンビニを出て、こちらに向かってきた。

そして無邪気な笑顔を見せて、

「(乗っても)いいですか?」

と問いかけてきた。

カバンの忘れものがあることを伝えようとすると、

それを遮るように、サッと紙切れを渡してきた。

(カバンのことについては口にしないでください。イチローの知り合いです)

すると、少し威圧するような目をこちらに向けて、乗車してきた。

連れの女も続いた。

「近くなんですけどすみません。K町までお願いします」

「…わかりました」

ワンメーターの距離である。

わたしは言われるままに黙って車を走らせた。

「あっ、そこのレオパレスの前で停めてください。おつりいいですから」

千円札を置くと、イチローの忘れもののバッグはそのまま置いて降りていった。

「ねぇ、今日なに食べよっか?…」

先に降りた女の声が聞こえた。

そして、その開いているドアから、

いつの間にか、頭の禿げかかった中年が乗車してきた。

「D駅行って」

もう大体分かった。

俺は運び屋をやらされている

イチローが、シンガポールから仕入れてきた…何らかの「もの」を、足がつかないように動かしているのだ。

麻薬なのかもしれないし、拳銃なのかもしれないし、

もっとやばいものなのかもしれない。


とにかく客が降りる度にそこから乗車があり、

通常のタクシー営業なら理想的なのだが、この人為的に作られた状況はあまり歓迎出来なかった。

そんなことを何度か繰り返して、

結局病院の前から乗った老夫婦がイチローのカバンを持って降りていった

そしてそれから、毎週火曜日に空港に行って、同じようなことを何度か続けた。

そのたびに乗車する面々は変わっていった。

一体どれだけの人間が関わっているんだ…

そして2ヶ月ほど経ち、

空港で待っていると、電話が鳴った。

やはり非通知設定だったが、

間違いなくイチローの声だった。

「すみません。もう今日はいいです。来週からも、もう要りません」

それだけ言って、電話は切られた。

そして、イチローの声を聞いたのも、それが最後だった。




10月6日(土) 日照0.9 雨0(少々) 気温22.6-13.4
営収 10,060(600) 8(1)回 10.25(5.00)時間
MAX 600-1,670


午前中は子どものサッカー練習を見学して、

息子の動きの良さに満足して、

その後、子どもを県立公園の学習センターへ連れて行って・・・

14時からの乗務

しかし・・・

記憶に残るほどの最悪の乗務やった

もうコメントなし

来週は良くなりますように。

2012年10月6日土曜日

「ビッグチッパー③」~10月3日(水)17点 5日(金)30点 


「ただ、もう一つちょっとしたお願いがある」

「お願い?」

「いや、そんなに構えないでくれよ。お願いと言っても他でもない、タクシーの仕事だよ。わたしは仕事で毎週シンガポールへ行っているんだが、帰りに空港に迎えに来てほしい。それだけの話だ」

「空港・・・からどこまで?」

「大した距離じゃないんだ。10分20分のところだが、メーターがいくらでも1万円は払うよ」

「10分で1万円・・・」

もうそれだけで「やばい仕事だ」と言っているようなものである。

ここまで来たら、金を返すか、とことんまでこの男の言うなりになるかどちらかの選択である。

深夜にタクシーに乗っていれば、

「やばそうな客」というのは、いくらでもいる

ちゃんと金を払ってくれるんやろか

車内でおかしなことしないやろか

切れるんちゃうか・・・

そんなとき、乗車拒否でなくても、駅で後に並んでいる車に代わってもらうことはそれほど難しくない。

大抵は遠方の客だから喜んで行く車はいくらでもいる。

要するに、そういう場合に、

「とりあえず行く運転手」と、「とにかく行かない運転手」に分かれるわけである

わたしは「行く運転手」であった

「来てくれるのかな?来週の火曜日にお願いしたいんだが」

「わかった・・・いや、わかりました」





10月3日(水) 日照8.4 雨0 気温25.5-14.4
営収 17,770(10,360) 14(8)回 10.00(5.25)時間
MAX 2,230-1,750


いや、ひどかった、この日は。

特に夜がさっぱりやったな

しかし休憩中に鍵をなくして、どうしようかと思ったが。

家の前の側溝に落ちてたのを発見!

よかったー(何してんの?)

10月5日(金) 日照9.7 雨0 気温24.0-11.7
営収 30,710(11,150) 15(5)回 11.50(5.75)時間
MAX 3,670-8,070


今日も苦しかったー

やっぱり夜があかんわ

10月に入って、良くなるかなーと思いつつも。

今週はさっぱりやな

嵐の前の静けさか

それとも

静けさの前の静けさか・・・

2012年10月3日水曜日

気まぐれ小説「ビッグチッパー②」~10月2日(火)40点



 「3千万あります。これは乗車させていただいたお礼のチップです。どうぞご自由に使ってください」 

そう書かれた紙切れを、公園の外灯の下で

わたしはじっと見ていた

どうしていいかわからなかった

しかし冷静な自分もいた。

そして冷静な自分が言った。

「警察に届けなさい。そしてこのメモを隠せばいい」

この客は、どういうわけかこの金を自分に預けようとしている。

何か「わけあり」なのかもしれない。

いや、「わけあり」に違いない。

しかし警察に届け出れば、

3ヶ月経てば、法的にも自分のものになる

※民法240条 遺失物は、遺失物法 (平成十八年法律第七十三号)の定めるところに従い公告をした後三箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。

意を決して車に戻り、

スマホで最寄の交番を探していたとき、

そのスマホが鳴り始めた・・・

非通知設定

一瞬迷ったが、

わたしには信じたくない確信のようなものがあった。

電話を取った。

「もしもし・・・」

「もしもし、先ほど乗車したものだ。いやぁ、電話を受けてくれるとは思わなかったよ。例のものは見つけたのかい?」

「ボストンバッグのことですか?」

「中身は見たかい?」

「何故この電話番号が・・・?」

「ハハハ!わたしも見ず知らずの運転手にこのようなことをするほど余裕のある人間ではないよ。君のことは調べさせてもらった」

「・・・調べた?どういうことだ?」

「とにかく警察には届けないでくれ」

「なぜだ?」

「なぜでもいい。とにかく届けるな」

「そんなこと言われても納得できるわけがないだろう。今から警察へ行く」

「わたしはそこにメモを残したはずだ。その金は遺失物ではない。立派な贈与になる」

「・・・贈与税がかかるということか」

「そうだ。3千万円贈与の贈与税は1,220万円だ」

「・・・よく計算したな」

「そんな無駄な税金を払わなくても、黙っていれば全額君のものじゃないか」

「それを伝えるためにわざわざ電話してきたのか?」

「まあ、そういうことだ。ただ、もう一つちょっとしたお願いがある」



10月2日(火) 日照10.1 雨0 気温25.6-12.8
営収 40,770(17,120) 23(10)回 13.75(7.50)時間
MAX 2,710-4,390


駅に他社の車がいなかったので、

流れで、休憩なしでがんばったけど

いやぁ、うまくいった

2日連続で、遠方なしの好成績

いい流れが来てる

2012年10月2日火曜日

気まぐれ小説「ビッグチッパー」~10月1日(月)33点



タクシーに乗って、

信じられないくらい多額のチップを置いていく客を

ビッグチッパーと呼ぶ

あれは忘れもしない、

秋も深まりかけた夜のことだった。

40代くらいの、

高そうなスーツを着た、

エリート風のサラリーマンが乗車して、

「朝晩は冷えますねぇ・・・」

なんていう、この時期お決まりの、他愛もない会話をしていた。

男性はわたしとそれほど年齢は違わないだろうに、

終始落ち着いていて、

その落ち着きぶりは腹立たしいほどだった。

駅でその男性を降ろし、

夜の忙しい時間帯だったので、

ほどなく次の客が乗車した

親子らしき女性2名

運転席の後ろ側に座った、娘らしき髪の長い女性が、

「運転手さん、ここにバッグが・・・忘れ物ですか?」

「えっ!バッグ?あっ、本当だ。どうもすみません」

見ると黒い小さめのボストンバッグだった。

 運転席の後下に置かれてはなかなか気付かない。

 さっきのサラリーマンだろうか。

落ち着いて見えたけど、忘れ物していったとは・・・人は見かけによらないものだ。

「(バッグの忘れ物を)教えていただいてありがとうございます」

よく見ると結構かわいい女性にお礼を言って、住宅街で親子を降ろすと、

近くの公園の外灯の下へ行って、

ボストンバッグの中身を確認した

札束が入っていた

それも数え切れないほどの・・・

そして一枚の紙切れが入っていた。

「3千万あります。これは乗車させていただいたお礼のチップです。どうぞご自由に使ってください」


10月1日(月) 日照0 雨0 気温21.4-14.8
営収  33,580(18,410) 18(11)回 11.50(6.00)時間
MAX 3,510-4,550


前半戦も、後半戦も

面白いくらいに流れが良くて

月曜日に、遠方なしでこの数字ってすごい

うまくいくときはうまくいくもんや。

しかし最後にたぬきと衝突してしまい

やや後味悪かった・・・